【タイトル】
『カウンセリングとは何か 変化するということ』東畑開人,講談社,2025
【テーマ】
精神分析、ユング心理学、認知行動療法、家族療法など乱立する心理学の流派を一段高い視点から俯瞰し、カウンセリングという営みに共通する「変化のメカニズム」を解き明かす一冊
【なぜこの本を読んだか】
新書大賞を受賞するなど話題作だったこともあり、気になって購入した一冊。448ページとボリュームがあるうえ、他に優先して読みたい本があったため、しばらく積んだままになっていた。それらを読み終えたタイミングで、そろそろ読んでみようと思い立った。
【学んだこと】
①苦悩を言葉にすること
- カウンセリングは「心の非常時」を扱うテクノロジーであり、霊でも神でもなく心に原因を見出す治療文化
- 自分の苦悩を文章にするのは簡単ではないが、ひとりで抱えてきたものを他者と共有できる形に変換しようとする行為(主訴を書くこと)には価値がある
- 主訴を書くことを通じて、自分を振り返り、少し客観視できるようになる
②「心をわかる」の中身
- 心をわかるとは、心が置かれている全体状況をわかることと、心の動き方を知ることの両方を指す
- この二つが揃うことが、カウンセリングにおける「理解」「アセスメント」の核心
③作戦会議と冒険、2つのアプローチ
- カウンセリングの中核にあるのは「アセスメント」
- 作戦会議としてのカウンセリング:破局を生き延びるために環境や身体など現実を動かし、結果的に心に変化をもたらす
- 冒険としてのカウンセリング:高度に防衛された心をあえて揺さぶり、心の次元で意図的に破局を起こし、それを生き延びることで心の再発達・生き直しを目指す
【視点の変化】
①「わかる」の分解と応用
- 本書ではカウンセリングにおける「わかる」を、その人が置かれている全体状況を把握することと、心の動き方や変化のパターンを知ることの2つに分解していた
- この枠組みはカウンセリングに限らず、家族や友人、自分自身を理解しようとする場面全般に応用できそうだと気づいた
- 表面的な状況だけを把握して、心の動き方やその変化まで見えていない「わかったつもり」も多いのではないか?
②能動的で多面的なアプローチ
- 本書を読む前は、カウンセリングは受け身に話を聞いてもらい、気持ちを受け止めてもらう場だというイメージがあった
- 作戦会議や冒険としての側面、そして5つの介入(バイオロジカル、ソマティック、サイコロジカル、コグニティブ、ソーシャル)があることを知り、もっと多面的で能動的な営みだと捉え方が変わった
【感想】
本書では数名の物語とともに、カウンセリングの原理や全貌が紐解かれていく。新書のなかではかなり分厚いほうだけれど、平易な文章でつづられているせいか、するするとおもしろく読めた。
特に、なんだかよくわからなかった「カウンセリング」に対して、どんなときに利用すればいいのか、どんなことをするのか、どのくらい時間がかかるものなのか、具体的なイメージを持てたのがよかったと思う。
ただ、わたしには「ふしぎの国のカウンセリングへ、ようこそ」のような文章がどうにも合わず、該当箇所は思い切って読み飛ばさざるをえなかった。なんていうんだろうな、著者の世界観に無理やり引きずり込まれる感じが苦手というか。あまり考えたことがなかったけれど、ひょっとすると、わたしは新書に対してそのような演出を求めていないのかもしれない。
それからもう1点。本書には「、」を使った傍点が頻出する。つまり、読者にポイントを先回りして示す親切な仕様だ。でも、重要だと感じる「心の動き」を大事にしたいわたしにとっては正直邪魔だったし、何より「、」を使った傍点自体が非常に苦手で(目がチカチカする、じっと見ていると気分が悪くなる)、読むのがとてもつらかった。
そのような読みにくさや合わなさを差し引いても、ハルカさんのエピソードではうるっときたし、読み終えた後の満足感はとても大きかった。特に「人は自分の物語がちゃんと聞かれて初めて、別の物語と共存することに耐えられるようになるものです。」という一文には深く共感した。


