【タイトル】
『福音派―終末論に引き裂かれるアメリカ社会』加藤喜之,中央公論新社,2025
【テーマ】
アメリカの巨大な宗教勢力である「福音派」の歴史的変遷と、彼らが政治や社会問題に深く介入し、アメリカ社会を分断してきた経緯と実像
【なぜこの本を読んだか】
書店の新書コーナーで大きく扱われているのをみて、この本を読めばトランプ大統領の言動が少しは理解できるようになるかもしれないと思ったから。現在のアメリカ政治や選挙において巨大な影響力を持つ福音派とは一体どのような立場をとる人たちなのか、その根本的な背景を知りたいと思った。
【学んだこと】
- 福音派は一枚岩の狂信的な集団ではなく、ビリー・グラハムなどの指導者がラジオやマーケティングなどの最先端のメディアテクノロジーを巧みに駆使し、大衆のニーズを掴んで社会に進出してきた集団である
- 政治活動の中心軸となっている「人工妊娠中絶」への反対は、元々彼らにとって重要なテーマではなかった
- 第三次中東戦争以降にイスラエル政府が福音派の「ディスペンセーション主義(終末論)」に注目し、意図的に働きかけたことで、現在の強固な結びつきが形成された
【視点の変化】
- 福音派の終末論とイスラエルの政治的意図が結びついた歴史を知り、宗教が政治や外交(安全保障)に与える影響の大きさを意識してニュースを見るようになった
- 「福音派」「ディスペンセーション主義」「シオニズム」などのキーワードが目に入るようになった
【感想】
「宗教」について知識や理解が足りていない自覚があったので、少しでも知ることができればと思って手に取ってみた。ただ、あまりにも馴染みがなさすぎて内容が頭に入ってこず、正直何度も挫折しそうになった。それでもなんとか最後まで読み切ってみて、ぼんやりとではあるけれど、トランプ大統領の言動や、彼を支持する理由が少し納得できたような気がする。彼らを突き動かしているのは「白人やキリスト教的価値観を中心とした古き良きアメリカを守る」という信念。しかし、アメリカ全体が同じ考えというわけでなく、同じキリスト教信者でも別の考えを持つ人達、別の宗教を信じる人達、さらに非宗教者である「ノンズ」も増えている。宗教と政治の結びつきは、とても複雑で難しい。一度読んだくらいじゃ理解できない。でも、それでいいような気もする。複雑な問題だということを理解できただけでも大きな収穫だったし、今後の国際ニュースやアメリカの動向をみていくうえで、重要な視点のひとつになった。今のところは、それで十分なのかもしれないと思う。



