学びのきほん 三大一神教のつながりをよむ

学びのきほん 三大一神教のつながりをよむ

【タイトル】

『学びのきほん 三大一神教のつながりをよむ』山本芳久,NHK出版,2025

【テーマ】

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教という三大一神教の基礎知識と、それぞれの「つながり」および「違い」について

【なぜこの本を読んだか】

国際政治に関する本を読んでいると、必ずといっていいほど「宗教」の話が出てくる。特にキリスト教とイスラム教の話題が多い。世界で起きていることを読み解くためには、宗教の話は避けて通れなさそうだが、わたしには宗教に関する知識がない。どうしたものかと考え、基本的なことを教えてくれそうなこの本を手に取った。

【学んだこと】

  • 3つの宗教は一見対立しているように見えがちだが、実は「聖典」「思想」「人物」の面で互いに深い影響を与え合っている
  • キリスト教はユダヤ教の「旧約聖書」を丸ごと正典として受け入れた上で「新約聖書」を付け加えており、イスラム教の「クルアーン」にもそれらと共通する人物が多数登場するなど、聖典のレベルで密接に関係している
  • 3つの宗教すべてにとって、「アブラハム」は信仰の原点となる極めて重要な共通の人物である
  • キリスト教ではイエスを「神であり人間でもある存在(救い主)」とするが、イスラム教では「5大預言者の1人(あくまで人間)」とし、ユダヤ教ではメシアとは認めないなど、イエスをどう位置づけるかが根本的な違いとなっている

【視点の変化】

  • 世界で起きているさまざまな紛争の原因を単純に宗教vs宗教の対立と捉えるのではなく、お互いに交わりあい、影響を与え合って複雑に動いているという視点で見つめる必要がある
  • 宗教間の対話において、ただ共通点を見つけて妥協したり、自らのアイデンティティ(濃い部分)をぼやかしたりする多元主義的なアプローチが常に正しいわけではないと気づいた
  • 真のコミュニケーションや対話とは、お互いの違う部分をあいまいにしたり隠したりするのではなく、むしろこだわったうえで違いを尊重し合うことから生まれる

【感想】

最も印象的だったのは宗教間対話の理論について。排他主義、包括主義、多元主義の3つの型に分けてみると、自分に近いのは多元主義の考えだった。それぞれの仕方は違っても大もとでは通じる部分があり、どれが優れているとか間違っているということはないという多元主義の立場は、争いを生みにくいひらかれた考え方だと思った。でも、そのような多元主義に対する批判を読んでハッとした。お互いの共通点を見出し、納得できる部分に焦点をあてて受け入れていくというのは、お互いの特徴が色濃く出る根幹となる主張を切り離したり、省いたりすることになりうる。しかしそれでは真の対話とはいえないのではないか。お互いの最も重要な部分を認め合うことからしか宗教間の対話は生まれない、という意見に大きな衝撃を受けた。確かにそうだなと思う。争いになりそうな種をあらかじめ摘んでおくことが、必ずしもよい結果を生むわけではない。互いを認め合うのがゴールだとしたら、むしろ遠ざかるアプローチなのかもしれない。そして、それは宗教間の対話にのみではなく、日常の人間関係にも当てはまる課題だなと思う。とても難しいことだけれども、お互いの違いを隠すのではなく見せ合い、受け入れ合っていく姿勢が大事だと感じた。