【タイトル】
『2030 来たるべき世界』エマニュエル・トッド,オードリー・タン,モニカ・トフトほか,朝日新聞出版,2026
【テーマ】
変化し続ける世界情勢の中で、2030年の国際秩序はどうなっていくのか、また日本はどう進むべきかを複数の知性から考える
【なぜこの本を読んだか】
『現代戦争論』『新書 世界現代史』『認知戦 悪意のSNS戦略』などを読み進めるうちに、世界や日本が置かれている現実に目を向けざるをえなくなった。世界の構造はどう変わっているのか、日本はどこへ向かうべきなのか。有識者の言葉から手がかりを得たくて手に取った。
【学んだこと】
- エマニュエル・トッドの視点:核兵器の問題の本質は、兵器そのものではなく「保有国の非対称性」にあること
- オードリー・タンの視点:AIやSNSは対立の煽動ではなく、人々の相互理解のために使うべきであること。インフォデミック対策としては事後対応よりも、あらかじめ人々の免疫を高めておく「プレバンキング」という事前の取り組みが重要である
- 台湾政府の対策:権力による「検閲」ではなく、市民からアイデアを募り、良案を法制化するというアプローチをとっていること
- AIと民主主義:現時点での最大の脅威は「生成AIによるプロパガンダ」であり、AI時代に民主主義を守るためには「好奇心・協力・共助の精神」が必要であること
- モニカ・トフトの視点:「市民は手遅れになるまで外交政策を考えない」。だからこそ、危機の前に国民の理解を促すことの重要性と、そのためのリーダーシップが不可欠であること
【視点の変化】
- 核保有には反対という立場自体は変わらないが、トッドの論理に触れたことで、核保有に賛成する人々の考え方やその背景が理解できるようになった
- 「議論」に対する捉え方が変わった。議論とは単なる意見のぶつけ合いではなく、異なる意見を持つ人がお互いに「なぜそう考えるのか」を聞き合うものなのだと実感した
- 相手の考えの背景を聞き合うような議論を、自分もできるようになりたいと思った
【感想】
トッドの考えは一貫していて、納得できる部分が多かった。優れた専門家の意見として知れてよかったと思う。それでも、日本国民としては、核保有以外の方法で安全保障を考えていきたいという気持ちに変わりはない。
オードリー・タンの話はいつも希望をもたらしてくれるけれど、今回もやっぱりそうだった。台湾の民主主義が正解というわけでもないだろうし、そのまま日本に当てはめることはできないのかもしれない。それでも学べることはたくさんあるし、学ぶことは可能だと思う。タンが最後に述べた「よく寝て外に出て人に会おう」のくだりがとても印象的だった。
モニカ・トフトの「政府にはリーダーシップと指導力が必要」という言葉が胸に刺さった。本当にそうだと思う。と同時に、わたしたち市民の側も情報の出どころを確かめて一次情報にあたり、疑いを持って判断すること、そのうえで意見の異なる相手の話にも耳を傾ける姿勢が必要なのではないかと感じた。


