地図で読むアメリカ

地図で読むアメリカ

【タイトル】

『地図で読むアメリカ』James M. Vardaman,森本 豊富,朝日新聞出版,2026

【テーマ】

アメリカを「50州」という行政区分ではなく、地形、歴史、移民、産業、宗教、人種、生活様式などの重なりから成る「10の地域文化圏」として捉え直し、多角的な事実からその素顔と未来を読み解く

【なぜこの本を読んだか】

書店に並んでいるのを見て気になってはいたものの、ほかに読みたい本が多くあったためスルーしていた。先日、TBS CROSS DIG with Broombergの『BACK STAGE AMERICA』で、加藤喜之さんが紹介されているのを見ておもしろそうだなと思い、読んでみることにした。

【学んだこと】

  • 税金・軍事・警察に見る州の自治権:アメリカの各州は、日本の都道府県よりもはるかに強い自治権を持ち、住民の日常生活に大きな影響力を及ぼしている。例えば、州や市は独自に税金を課す権利を持ち、軍事面でも連邦統括下の米軍とは別に州兵が存在し、警察も州によって制服やパトカーの見た目が異なる
  • 地理と産業構造が政治感覚を作る: 例えばアパラチアの石炭産業やラストベルト(錆びついた工業地帯)の空洞化といった土地の状況が、人々の「置き去りにされた」という感覚や反エリート感情、トランプ主義などの政治的動向の根源となっている
  • 歴史の連続性: 南部地域に残る奴隷制、プランテーション、南北戦争後も続いた人種隔離政策などの歴史は、現代における連邦政府に対する不信感や歴史認識をめぐる争いに直結している

【視点の変化】

  • アメリカを一つの国として大きく捉えていたが、本書を読み、地形や気候の違い、建国からの歴史、産業、人々の暮らしなど、地域ごとに異なる背景を持つことを認識するようになった。異なる価値観や宗教を持つさまざまな人々が集まってできた国なのだと実感した
  • 現在アメリカで浮かび上がっている問題は、単なる主義主張の違いではなく、何代にもわたって受け継がれてきた歴史認識や感覚の表れでもあると捉えるようになった

【感想】

タイトルをはじめて目にしたとき、地図を細かく見ていく類の本かと思って身構えていたが、実際は地理が苦手なわたしでもとっつきやすい内容で、安心して読み進められた。地図を読むというのは、位置関係を把握するだけでなく、歴史の厚みを持った空間として世界をまなざすということなのかもしれない。

これまでアメリカという国に対して「巨大な国土」「世界の最先端」「多様な人々が暮らす国」「スポーツが強い」などの漠然としたイメージしか持っておらず、ニューヨークやロサンゼルスなどの有名な都市がどこにあるかくらいしか知らなかった。本書を読み、アメリカとひとくちに言っても、地理的・歴史的に異なる背景を持っていること、そこで営まれてきた人々の暮らしや、それぞれが抱える問題が脈々と受け継がれ、現在につながっていることを実感できた。

もちろん、本書に書かれていることがアメリカのすべてではないだろう。それでも、何かを捉えようとするとき、主流とされる考え方や目立つ部分だけでなく、光の当たりにくい場所にも目を向ける意識を持ちたいと思えるようになったのは、大きな大きな収穫だったと思う。

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