【タイトル】
『はじめての公共訴訟 社会を動かす、私たちのツール』井桁大介,亀石倫子,谷口太規,丸山央里絵,集英社,2026
【テーマ】
司法を通じて社会課題の解決を目指す「公共訴訟」について、一般向けにさまざまな角度から解説する
【なぜこの本を読んだか】
各方面でおすすめされていたので興味を持った。帯に書かれている「もっと公正な社会を生きたいあなたへ」という言葉や、朱喜哲さんの推薦文に惹かれて読んでみることにした。
【学んだこと】
- 公共的意義: 公共訴訟は、原告個人の権利侵害の救済にとどまらず、公共政策の変化や社会の発展・転換をもたらす大きな意義を持つ
- メディアとしての機能: 公共訴訟をとおして問題の悲惨さや重要性が社会に広く知れ渡り、世論を形成することで国や企業の態度を変化させる「メディア」の役割を果たす
- 歴史と広がり: 1960年代の大気汚染公害訴訟などの歴史から始まり、現在は同性婚(「結婚の自由をすべての人に」訴訟)やタトゥー裁判など、多様な分野で社会変革の手段として注目されている
【視点の変化】
訴訟や裁判は、事件や事故の当事者だけが経験する、自分とは縁遠いものだと思っていた。しかし本書を通して、公共訴訟が個人の救済にとどまらず社会全体を変えうるものであること、世論を動かす「メディア」としても機能することを知り、その距離感が変わった。自分が原告として問題提起をするような関わり方でなくても、実際に行われている公共訴訟について情報を集めたり、自分なりに考えたり、クラウドファンディングで支援したりすることも、一つの参加の形になりうるのだと気づいた。
【感想】
新書を読んで号泣したのは本書がはじめてだ。第1章の”「結婚の自由をすべての人に」訴訟”で出てきた同性カップルの一人、まさひろさんの父親が証人として法廷に立ったときの言葉「男女であれ、同性どうしであれ、幸せな人生を送る権利はあると思います。そういうのを認めてあげる世界、社会になってもらいたいなというふうに思っています」(本書34頁)に、こみ上げる涙を抑えられなかった。
わたしたちの経験や感情は、わたしたち自身が声を上げることではじめて公になる。その声を聞いた人々が問題について認識し、考え、それを誰かに伝えることで、個人から社会へと広がっていく。そして、変わらないと思われていた社会が、時間をかけて少しずつ変わっていく。公共訴訟にはそのような意義や役割があるのだと知り、胸が熱くなった。
とはいえ、現状では問題に決着がつくまで多くの時間とお金がかかっていることも確かで、声を上げるハードルはまだまだ高いと感じる。誰もが声を上げられるように、誰もが社会をあきらめなくていいように、自分には何ができるだろうか。まずは知ること、考えること、可能な範囲で支援をすることから始めよう。そして、希望を持ちながら続けていこう。そんな気持ちにさせられる1冊だった。


