【タイトル】
『人はなぜ特攻に感動するのか』井上義和,坂元希美,光文社,2026
【テーマ】
人々の心に「刺さる」コンテンツの核心には「特攻文学」があるという仮説に基づき、『ゴジラ-1.0』や『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』といった作品のヒットの理由を紐解く。また、特攻隊をポジティブな感動と結びつけてはならないという「正しさの色眼鏡」を外し、現代を生きる人々の感覚を探求する。
【なぜこの本を読んだか】
古本屋さんで見つけて、中をぱらぱらとめくったときに「特攻文学」という言葉が目に入り、興味をひかれたから。特攻モノが好きなわけではないが、文学にそのようなジャンルがあると知らなかったので読んでみようと思った。
【学んだこと】
- 日本の大ヒット作だけでなく、『アルマゲドン』や『ターミネーター』といったハリウッド映画も「アメリカの特攻文学」として捉えられるということ。
- 特攻文学には、「命のタスキ」「勇敢な父祖」、「父になる」などの共通するキーワードがあるということ。
【視点の変化】
- 一度も『ゴジラ』作品を観たことがなく、この本を読むまで恐竜映画だと思っていたが、あまりにも熱く語り合われるのをみて興味を持ち、観てみることにした。
- 特攻を歴史的悲劇やタブーとしてだけでなく、現代に生きる人々の心を動かすコンテンツの構造に注目してみるという新しい視点を知った。
【感想】
一番印象に残っているのは、やはりゴジラについて語られているところだ。社会学者の井上義和氏と映画ライターの坂元希美氏による対談形式ということもあり、お二人の盛り上がりがそのまま文章に現れていて面白かった。おかげで、今までまったく興味のなかったゴジラ作品をみてみたくなり、『ゴジラ-1.0』と『シン・ゴジラ』をたてつづけにみてしまった。この本を読むまで、ゴジラは恐竜で、特撮映画が好きな人がみる作品なんだろうと思っていた。でも、実際にみてみると、ゴジラは恐竜じゃなかったし、確かに特撮映画ではあるけれど、それだけではない感じがした。ひとことで言うなら、ゴジラをめぐる人間や社会の話だった。
正直なところ、そのほかの分析についてはあまりピンとこなかった。特に、「父になる」「勇敢な父祖」というキーワードが出てきてからは、モヤモヤしたものを抱えながら読み進めた。なんていうんだろうな、特攻自体が男性メインの話だからある程度はしかたないのかもしれないけれど、それらのキーワードをもってして「だから特攻文学が心に刺さる」と言われると、なんとなく蚊帳の外のような感じがしてしまうというか。それでも、全く興味のなかったものに触れるきっかけを得たというのは、実はかなりすごいことだと思うので、読んでよかったと思うし、とても感謝している。


