七三一部隊

七三一部隊

2026年5月7日

【タイトル】

『七三一部隊』常石敬一,講談社,1995

【テーマ】

関東軍防疫給水部において医学者たちが「研究」の名のもとに行った生体実験と細菌戦の実態、敗戦時の証拠隠滅から戦後の戦犯免責までを追い、戦争犯罪の実態を明らかにしようとした記録

【なぜこの本を読んだか】

Netflixのドラマ「京城クリーチャー」の視聴をきっかけに、日本軍の研究所で行われていた生体実験や暴力、そして「七三一部隊」の存在を知った。七三一部隊で具体的にどのようなことが行われていたのか、まずは一つの視点として知りたいと思い本書を手に取った。

【学んだこと】

  • 敗戦時に資料の多くを隠匿、隠滅したことで、客観的な事実にもとづく解明が困難であること
  • 七三一部隊や細菌戦に関わった医学者たちが戦犯免責を受け、特に訴追されることなく地位のある立場についたこと
  • 「研究」という名目と組織の論理のなかで、医学者たちが残虐行為を正当化していったこと
  • 細菌戦の被害が中国の一般市民に及んでいたこと

【視点の変化】

  • 関心を寄せることが抑止につながる:科学や医学の発展は喜ばしいものである一方、それが国家や軍の論理と結びついたとき、間違った方向に進むことがある。一般市民として、何が行われているかを知ろうとすることが、抑止の一つになりうるのかもしれない
  • 公的な記録が残っていない事実に向き合うことの困難さを感じた
  • 日本政府が七三一部隊の責任を正面から認めてこなかった事実を知り、歴史認識のずれが及ぼす影響について考えるようになった

【感想】

本書を読み進めていくなかで、明らかに憶測だったり私情が挟み込まれていたりする部分が多いのが気になり、中盤くらいまではなかなか集中できなかった。特にp.137の「筆者は田村をよく知っている。彼の戦犯管理所での証言を疑う理由はない。」という一文には驚いた。よく知っているから疑わない、という論理は、史料批判としてどうなのだろうと思ってしまった。

そのうえで意識的に距離を保ち、違和感を抱えたまま最後まで読み切ってみて思うのは、著者にはどうしても伝えなければならない使命のようなものがあったのではないかということだ。客観的な事実が乏しいなかで、関係者から粘り強く話を聞き出し、あちこち出向いて数少ない資料に繰り返しあたる。言うは易く行うは難しとはこのことで、想像を絶する途方もない道のりだったろうと思う。正直なところ、本書に書かれていることが正しい事実かどうかはわからない。しかし、七三一部隊は確かに存在し、人道に反することを行っていた。その事実から目をそむけてはならないと強く思う。

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