【タイトル】
『スマホは心を操る』木村忠正,朝日新聞出版,2026
【テーマ】
スマホ起動ログと認知バイアス・道徳心理の知見から、スマホ依存の実態とSNSの炎上・分断・フェイクを生む仕組み、AIに組み込まれる正義のあり方までを具体的に解き明かし、主体的に付き合うための道筋を探る
【なぜこの本を読んだか】
帯に書かれていた「やめたいのに、やめられない」「やめられないのは、あなたのせいではない」という言葉に惹かれて手に取った。自分自身にも、意思とは裏腹に「ついついスマホを触ってしまう」経験がある。その行動がどういう仕組みで起きているのか、興味があって読んでみようと思った。
【学んだこと】
①ポイ活アプリが加速させた「スマホ漬け」
- ポイ活アプリの普及が、スマホ利用全体を加速させたという指摘が印象的だった。2023年のデータでは、ポイ活アプリ利用者は1日平均200回近くアプリを切り替え、利用時間は6時間に及ぶという。生活のあらゆる場面にスマホが入り込んでいる状況が、数字としても裏付けられている
- その結果、SNS・ゲーム・動画といった他のアプリとの間で、限られた利用時間を奪い合う構図が生まれている
②スマホに惹きつけられる心理的な仕組み
- 心がスマホを渇望する仕組みは、習慣形成・フロー体験・認知バイアスの3つに大きく分けられるという
- その土台にあるのが「フックモデル」で、通知などのトリガーから始まり、スワイプやスクロールといった簡単な行動を経て、「いいね」やおすすめ動画のような予測できない可変報酬が与えられる。そこにプロフィール作成やフォローといった「投資」が重なることで、ユーザーはアプリから離れにくくなっていく
- 通知は単なるお知らせではなく、この一連の流れに入るための最初のスイッチとして設計されている
③習慣は断ち切るのではなく、設計し直すもの
- スマホやアプリがどうやって自分を惹きつけようとしているのか、その仕組みを理解したうえで関係性を設計し直すことが重要
【視点の変化】
- スマホ依存の基準は、利用時間の長さそのものではなく、「自分はどれくらい使っていると思っているか」という主観的な認識と実態のずれにあると知った
- 無意識のうちに使うのではなく、いつ、どんな場面で、何に反応してスマホを手に取っているのかを自分で把握することが、向き合い方を変える第一歩だと思うようになった
【感想】
わたしは毎日車の運転をするんだけれど、以前から気になっていたことがある。それは、信号待ちで隣り合った車や対向車のドライバーがスマホを見ていることがものすごく多いということだ。社名が書かれた車、大きなトラック、ベビーインカーのステッカーを貼った車、ひどい人は運転席周りに何個もスマホホルダーを設置して操作しながら運転をしている。大事故につながりかねない危険な行動をやめられない人たち。わたしは彼らこそが、スマホ中毒、スマホ依存者だと思っている。
そういうわたしにも、「たいして用もないのに」スマホを触ってしまい、気づけばもうこんな時間…という苦い経験は山ほどある。ただ、インターネットやスマホとの付き合いが長い分、使い方や向き合い方についてはそれなりに考えてきたし、本書で提起されている「対話的な関係性」みたいなものもわりと作れているほうなのではないかと思う。本書では、わたしが試行錯誤しながら我流でやってきたこと(に近いこと)を、データや理論でわかりやすく解説されていて、納得しながらおもしろく読み進められた。ところが第4章あたりから、著者自身の研究の話が増え、急に専門的になった印象がある。そこからはなかなか頭に入ってこなくなってしまい、読み飛ばしながらなんとか読了した。興味がある内容だっただけに、その点が少し残念だった。
とはいえ、テーマ自体はとてもおもしろかったし、自分の考えやスマホとの付き合い方を整理する良い時間になったなと思う。


