【タイトル】
『オードリー・タンが語るデジタル民主主義』大野和基,NHK出版新書,2022
【テーマ】
デジタル技術を活用した市民参加型民主主義の実践と、台湾モデルが示す政府と市民の新しい関係
【なぜこの本を読んだか】
オードリー・タンがすごい人だということは、特にコロナ禍の時期にニュースなどを通して知っていたけれど、実際にどんなことを実践したのか知りたいと思った。選挙のたびにこの1票にどれだけの意味があるのか?という疑問を抱えながら投票してきた。年に数回の選挙だけでなく、もっと国民の声が反映される政治にならないものか。そんな期待を込めて手に取った1冊。
【学んだこと】
- 「Join」プラットフォームの存在:選挙権のない学生でもネットで政策提案ができ、5,000人以上の賛同が集まれば政府が検討義務を負う仕組み。「政治参加=投票」という思い込みが崩された
- 3つのF(Fast, Fair, Fun):タンが政治参加のあり方として掲げる3つの原則。速く(Fast)、公平に(Fair)、楽しく(Fun)。民主主義をむずかしく構えるものではなく、市民が自然と関与したくなる場にするという発想が新鮮だった
- クアドラティック・ボーティング(二次投票):99ポイントを自由に配分し、強く支持する選択肢には多くのポイントを使う代わりにコストが増すという投票方法。「1人1票」では拾えない優先順位や熱量を可視化できる
- 「開かれた行政府」の原則:政府の意思決定プロセスをオープンにすることで、不正や不信感を根本から減らす。透明性こそが信頼の土台だという考え方
- SNSの構造的問題(返信機能や匿名性)がむしろ対立を煽ること、そしてその対処は検閲ではなく「共通の感情を文脈ごと可視化すること」だという視点
【視点の変化】
- デジタル民主主義は単に利便化を図るものではなく、民主主義の質と頻度を上げ、ひいては国民の政治参加を促す試みだと考えるようになった
- 政治は選挙だけでなく日常的に関与できる場でありうるし、変えていける
- 政治を難しく考えすぎず、気軽に参加できるものと捉えるようになった
【感想】
とにかく圧倒された。タンの言葉は思想的でありながら、具体的な制度設計に直結している点が心地よく、するすると読み進められた。「なぜそれをやりたいか」を先に問うソクラテス式問答法を幼少期から親に課されたというエピソードも印象的で、彼の思想の根っこのようなものが見えた気がした。台湾と日本の政治文化の違いは大きいが、「できない理由」より「何から始められるか」を考えさせてくれる1冊だった。


