【タイトル】
『人生は逆算できるのか』勅使川原真衣,筑摩書房,2026
【テーマ】
「将来のために逆算して計画すべき」という人生観を、キャリア教育の前提、進路選択の動機、能力観などの切り口から疑い、答えのない「途上」を生きる安心の形を探る
【なぜこの本を読んだか】
YouTubeで勅使川原さんの話を聞いたことがあり、わかりやすい説明と明るい語り口に惹かれた。夫所有の分も含めると家には勅使川原さんの著書が数冊あったが、これまで一冊も読んでいなかったので、ちょうど出たばかりの新刊から読んでみることにした。
【学んだこと】
①安心には2種類ある
- 見せる安心は、他者に示し、他者から評価を得る安心
- 感じる安心は、自分の基準で体感する安心
- どちらかではなくどちらも大事で、軸を2つ持つことが重要
②能力は存在意義とは関係がない
- 誰もが持ち味を持っていて、持ち味そのものに優劣や善悪はない
- 優れている・劣っているように見えるのは、単に役割が違うだけのこと
- それを能力主義の枠組みで測ろうとするから、比較や序列が生まれる
- そうして得られるのは「見せる安心」にすぎない
③「感じる安心」を育てるための小さなレッスン
- その場で言えなかったことを、ジャーナリングなどであとから振り返って拾い上げる
- 出来事をすぐに「よい・悪い」に分けない
- 評価しない・されない関係を意識して大事にする
【視点の変化】
- 評価される安心を求めるほど、それを失う不安も強くなる。安心と不安が表裏一体になっているという見方が新鮮だった
- 人生は螺旋を描くように進んでいくもので、直線的な成長だけでなく、成熟のプロセスにも目を向けることが大事だと分かった
【感想】
人生っていうのは、良くも悪くも思いどおりにいかないものだ。今目の前にある現実はかつて夢見ていた未来とは全く違うし、自分とは一生縁がないと思っていた幸せをいつのまにか手に入れていたりもする。ただ、それは経験を重ねてきたから知っていることで、もっと言えば自分が経験してきた分量、範囲でしか感じられないことでもある。たとえば、若い子どもたちに「人生って思いもよらないところに行きつくものなんだよ」とか、「思いどおりにいかなくてもいいんだよ」と言うのはとても簡単だ。でも、じゃあどんなふうに考えていけばいいのか、どう生きていけばいいのかみたいなことを言葉にして伝えるのはものすごく難しい。この本には、そういう「伝えたいけれどうまく言えずに困っていたこと」がたくさん書かれている。
文体は、中高生などの若者や初学者向けのちくまプリマー新書らしく、読者に話しかけるような語り口でとっつきやすい。それに、著者の話をYouTubeで何度か聞いていたこともあって、講演を聞いているような感覚で読めたのもよかった。ただ、少しだけひっかかったのは、使われている言葉や表現がやや古風だったこと。読んでいてすんなり入ってこないところが何箇所かあった。相性といってしまえばそれまでだけど、もしかすると、勅使川原さんに関しては書かれたものを読むより、話を聞くほうがわたしには響くのかもしれない。


