沖縄を語りつぐ ある家族の歴史

沖縄を語りつぐ ある家族の歴史

【タイトル】

『沖縄を語りつぐ ある家族の歴史』川平朝清,ジョン・カビラ,岩波書店,2026

【テーマ】

川平家のファミリー・ヒストリーを通して、沖縄の歴史と記憶を次世代へ継承すること

【なぜこの本を読んだか】

新刊情報で本書の存在は知っていたが、J-WAVEで著者であるジョン・カビラ氏自身がこの本を紹介しているのを聴き、読んでみたいと思った。あわせて、本の元になった2019年の放送がpodcastで配信されていることを知り、当時の放送を聴くきっかけにもなった。

【学んだこと】

  • 歴史を大きな政治的動向として捉えることはもちろん大事だが、個人の語りや個人の歴史からしか見えてこないものもある。川平ファミリーの歩みを通して、戦争や戦後の沖縄、放送・メディア、家族といったテーマが、俯瞰の視点とは違うリアルな手触りで立ち上がってきた
  • 「負けることで生き延びられる」という朝清さんの言葉には、教科書の「敗戦」という一語には収まらない、生身の実感がある
  • 検閲がなくなった経緯や、『鉄の暴風』の朗読が人々の「語り合い」を生んだエピソードには、メディアが果たしてきた役割の具体像がある

【視点の変化】

  • 「本土復帰」という言葉に対し、当事者の視点から「施政権返還」という表現を用いることの重みや、当時の複雑な感情に触れることができた
  • 今は当たり前にあるラジオやテレビも、その必要性を信じて広めようと尽力した人たちがいたからこそ普及したのだと実感した
  • 本書を読みはじめる前から、『証言 沖縄スパイ戦史』(三上智恵,集英社,2020)を読んでいた。かなり分厚く証言も生々しいため読むのに苦労していたが、『沖縄を語りつぐ』を読み終えたことで「もっと知りたい」という気持ちが強まり、読み進める力になった

【感想】

個人の語りというのは、ともすれば誰にも聞かれないまま消えていくもので、語られたとしても、ごく限られた人びとに共有され、受け継がれたり受け継がれなかったりするものだろう。そんな貴重な語りを、川平家となんの関わりもないわたしが聞けること、読めることのすごさをひしひしと感じながら、最後まで駆け抜けるように読んだ。

教科書で学ぶ歴史にももちろん意味がある。俯瞰の視点から流れやポイントを掴むことで得られる知識は大きい。でも、ひとつの家族の歴史を通して見えてくる風景、色彩、生活や時代のにおいは、わたしたちの五感を強く刺激する。遠くの歴史が、すぐそこに実際にある、確かな手触りとして感じられるような気がする。

本書を読み、同じ九州出身でありながら沖縄について何も知らないことに気がついた。沖縄の歴史についてもっと知りたい。そして、いつか沖縄へ行き、その文化や歴史に触れてみたいと強く思う。